ミネソタ大学の児童発達研究所で、親子の愛着関係について研究されているところがある。
その研究から早期における愛着関係が長期にわたって子供に与える影響というものがわかってきた。
もしかすると子供の人生をも左右する「重要な要素の1つ」になるかもしれません。
少し長くなるが読んでみてほしい。
ラット研究から見る「良い親子関係」が与える効果
親の愛情やふれあいが大切だということが、ラット研究からも証明されています。
ラットの脳は人間の脳と似ているため、よく実験で使われる一般的な方法です。
マギル大学の神経科学者マイケル・ミーニーの研究で、母ラットが子ラットをなめたり毛づくろいしたりする行為が子ラットのストレスホルモンを鎮め、不安を解消していたことから、なめたり毛づくろいしたりすることが子ラットにどう影響するのか実験しました。
実験内容は、生まれて間もない子ラットと母ラットを1つのゲージに入れ、10日間なめたり毛づくろいしたりする回数を記録し、回数が多い母ラットには高LGのラベルを貼り、回数が少ない母ラットには低LGのラベルつけて、親の行動の違いで長期的にどんな影響が子ラットにあるのか調べました。
生後22日の子ラットを母ラットと別のゲージに移し、人間でいう思春期から大人になる生後100日まで同性の兄弟たちと育った。
成体となった子ラットをオープンフィールドテストという広い円形状のフィールドに入れて自由に探索させると、大胆なラットは壁から離れてフィールドを探索するが、不安の強いラットほど壁から離れようとせず壁に沿ってぐるぐる周回する違いがあった。
実験結果は5分間のテストで、低LGの子ラットたちはフィールドの真ん中に行ったのは平均5秒以下、高LGの子ラットたちは平均35秒と7倍の差がついた。
食べ物を使った10分間のテストでは、高LGの子ラットは4分ほど警戒し、2分以上食べていたのに対し、低LGの子ラットは9分以上警戒し、食べたのは数秒だけだった。
その他のどのテストでも高LGの子ラットの方が良い結果を出した。
迷路を抜けるのがうまい、社会性が高い、好奇心が強い、自制心がある、攻撃性が低い、健康で長生き、脳の大きさや複雑さも良好な結果となった。
そこで、神経質な母ラットから生まれた子ラットは同じく神経質な気質を引き継ぐのではないかと考え、高LGと低LGの母ラットから生まれた子ラットを生後すぐに入れ替え、同じ実験をおこなった。
実験結果は変わらず、低LGの母ラットから生まれた子ラットでも高LGの母ラットに育てられると良いテスト結果を出していた。
つまり、育てた母親の習慣によって長期的な影響を与えていたということです。
母ラットが子ラットをなめたり毛づくろいしたりする行動が、ホルモンや脳内物質だけでなく、脳の深い領域、遺伝発現の制御にまで影響していたことがわかりました。
その場所は、大人になってからのストレスホルモンを処理する場所であり、海馬をコントロールする場所であることが判明した。
実際に人間の脳細胞を使った実験でもこの反応が確認されている。
ストレス反応に関するDNAを調べると、生後早い時期から親の健全な行動によってスイッチが入るのだが、残念ながら子供の頃に虐待された経験のある自殺者の脳では、このスイッチが切れていた。
つまり、子供の頃に受けたダメージはDNAにも損傷を与えるということです。
ニューヨーク大学の心理学者クランシー・ブレアの実験で、1万2000人以上の幼児を対象に生後7か月から毎年追跡調査する大規模な実験をおこなった。
実験内容は、毎年ストレスのある状況に反応して、コルチゾールのレベルがどれだけ上がるか調べる実験をした。
実験結果は、家庭内の環境上のリスク(騒動や混乱、人間関係など)が子供のコルチゾールの値に大きな影響を与えていたことがわかった。
ただし、母親が無関心だったり無反応だったりした場合のみ影響があることが判明した。
つまり、母ラットが子ラットを毛づくろいする行動みたいに、母親が子供に愛のある行動、適切な子育てをしていれば、環境上のリスクが子供に与える影響がほぼなくなる。
以上の理由から、親の愛情やふれあいが、いかに大切なものであるのか再確認することができた。
大人からしたらふれあいは、ただのふれあいかもしれないが、赤ちゃんからしたら大きな意味を持ったふれあいとなることを忘れずに接してあげてくださいね。
僕もわが子にたくさん愛情を注いであげようと思う。
愛着理論
イギリスの精神分析医ジョン・ボウルビィとトロント大学のメアリー・エインズワースが発展させた愛着理論によって、当時主流となっていた行動理論に基づく育児に異を唱えることとなった。
当時の児童発育の分野では、子供の発達は機械的に促されると信じられ、子供の内的世界はたいして深くないと考えられていたので、乳幼児が母親の近くにいたいと思うのは、生物としての必要性からで、それ以上の意味はないと考えられていた。
そして、行動理論にもとづく子育てのアドバイスとして、子供が泣いたときは抱っこや慰めで「甘やかすのはやめなさい」といったことが主流な考え方だったという。
現代でも「子供を甘やかすにはよくない」なんて聞きそうですが、この子育ての仕方は逆効果であると1960年代からの一連の研究で示された。
生後1か月のあいだに、泣いたとき親からすぐにしっかりした反応を受けた赤ちゃんと、泣いても親に無視された赤ちゃんが、それぞれ1歳になるころ、泣いたとき親からすぐにしっかりした反応を受けた赤ちゃんの方が自立心が強く積極的になる傾向が高かった。
その後も子供が就学前まで同じ傾向が続くことがわかったという。
つまり、幼児期に子供の感情的な要求に、親が敏感に温かく応えてあげる方が自立心が強く積極的な子に育つという結果になった。
メアリー・エインズワースは、子供の情緒的能力を測定する方法として「慣れない状況(ストレンジ・シチュエーション)」という方法で測定した。
遊び場で生後12か月の子供と親子で遊んでもらい、しばらくして母親だけ退出してもらい、知らない人と部屋に残されるか、一人で残される状況になる。
しばらくして母親に戻ってもらい、そのときの子供の反応を観察するという実験をおこなった。
母親が戻ってきたとき、子供の反応が喜んだり、嬉しそうに泣きながら駆け寄ったり、抱きついたりした温かい反応を示した子供たちを「安定群」と分類した。
逆に子供の反応が、気づかないふりをしたり、親を叩いたり、うずくまって動かなかったりした子供たちを「不安定群」と分類した。
この子供の反応の違いは、生後1年間の親の反応の感度と直結していたことが判明した。
つまり、子供の感情的な要求に敏感に温かく反応した親の場合には「安定群」の子供になり、無視や放置、突き放した態度だったり、敵意を子供に向けていたりした親の場合には「不安定群」の子供になっていたことが判明した。
結構怖い話ですよね!親の行動で子どもの行動までにも影響を与えてしまうのなら、気を付けたいところですね。常に気をつけるのは難しそうですが!
あとは、子供が自分で寝てもらう方法、セフル寝んねなんかにも、子供が泣いたらしばらく待つみたいな教えがあるが、たしかにセルフ寝んねしてくれるようになるかも知れないが、こういった親の行動が子供に与える影響も考えなくてはならないと思う。
この親の行動で子供に与えた影響は、次の実験で明らかにする。
ミネソタ大学の児童発達研究所で明らかになった「愛着」の重要性
ミネソタ大学の児童発達研究所における児童心理学の教授アラン・スルーフとバイロン・エゲランドの研究で、子供たちが生まれてから30代になるまでずっと追跡調査した長期研究があります。
実験の被験者は、低所得者で初めて出産する267人の妊婦で、生まれてきた子供たちをずっと追跡調査した。
実験内容は、上記で紹介したメアリー・エインズワースの「慣れない状況」での研究を引き継いだ実験となっている。
つまり、被験者の子供たちに「慣れない状況」のテストをさせて、子供の反応・アタッチメントで「安定群」と「不安定群」に分類し、その子供たちがどんな人生を歩むのか、ずっと追跡調査したものです。
この長期研究でわかったことは、子供が満1歳のときの親子の愛着関係から、その後の人生を広範囲で予測できることが判明した。
「安定群」の子供たちは、友達とうまく遊べたり、親密な友人関係を築いたり、人間関係のトラブルが少なかったりした。
就学前の段階では、教師による行動面の判断で「望ましい」と評価されたのは「安定群」の子供たちで3分の2「不安定群」の子供たちは8人に1人しか評価されず、1つ以上の問題があると評価されることが多かった。
「望ましい」と評価された子供たちは、人の話が聞けたり、積極的に活動したり、激しく感情を爆発させることがなかった。
また、依存の指標では「不安定群」の子供たちの90%が依存度が高く、「安定群」の子供たちでは12%しかいなかった。
子供の感情に全く応じなかった親の子供たちは、最も低い成果しかあげられなかった。
子供たちが10歳のころ、4週間のサマーキャンプに48人を参加させ、カウンセラーに評価してもらった。
「安定群」の子供たちは、自信と好奇心があり、失敗にもうまく対処できると評価された。
「不安定群」の子供たちは、他の人たちと関わる時間が短く、カウンセラーと過ごすか独りで過ごす時間が長かった。
子供たちが高校生のころ、中退せず卒業できる生徒を予測するために判断材料が何なのか調べたところ、高確率で中退してしまう生徒を予測することができた。
知能指数や学力テストの点数、気質や能力といったデータよりも、幼少期の親のケア、関わり方に関するデータのほうが精度が高く、77%もの精度で予測することができた。
つまり、子供たちが4歳になる前にその子が高校を中退してしまう確率を77%で予測できるというのである。
遺伝の可能性はどうなのか気になるところですが、この研究結果は親として無視できないものだと思います。
結論としてまとめると、赤ちゃんの頃から親との愛着関係をしっかりと築くことによって、その後の人生で好奇心や自立心、自制心の強い子供に育ち、障害やストレスにもうまく対処できるレジリエンスが高く、社会性や人間関係が良好な人生を歩む可能性が高い。
もし、子供にひどい態度をとってしまったという親御さんがいるとすれば、今から子供との接し方を変えてください。
愛着関係は築きなおすことも可能だという研究結果もあります。
ミネソタ大学の心理学者ダンテ・チケッティの研究で、児童虐待を受けた1歳の子供を対象に「慣れない状況」のテストをしてもらうと子供のアタッチメントが「安定群」に分類されたのは1人だけで、90%の子供たちは「不安定群」よりもさらに悪い「無秩序群」に分類された。
この子供たちを対象に1年間の親子心理療法を受けてもらうグループと、標準的な行政処置を受けるグループに分けて実験をした。
1年後、親子心理療法を受けたグループは、61%の子供が安定した愛着関係を築いていたのに対して、標準的な行政処置を受けたグループは、たったの2%の子供しか改善していなかった。
つまり、親子の愛着関係が健全なものとなれば、子供のアタッチメントは変わることができることを示しています。
ただ、自分を変えるのは簡単なことではないので、専門家に頼るか、認知行動療法の本を読んでみることをお勧めします。
以上の結果として、愛着関係はかなり重要だと思うので、純粋にわが子を可愛がってあげようと思います。
もちろん、親であるママとパパの夫婦関係も重要なので、同様に可愛がってあげような!
長くなったけど、最後まで読んでくれてありがとう。
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