子供の脳はネグレクトでここまで小さくなる!能力は遺伝かについて

子育て

子供の能力は「生まれ」か「育ち」ではなく相互作用

子供の能力を決めるものは「生まれ」か「育ち」かという議論がよくあるみたいだが、どうやら相互作用ではないのかという考えがあるらしい。

つまり、遺伝子と環境との相互作用によって、子供の能力に影響を与えるのではないかという考えだ。

思春期における学習到達度試験スコアを遺伝子の違いにさかのぼって分析したものがあるみたいだが、こういう試験の成績は部分的に学校教育や家庭環境によってもたらされていることがわかったという。

遺伝子と環境との相互作用を主張する研究をみると

神経科学者のアヴシャロム・カスピらによる研究だと、虐待を受けるような環境が引き金となり、モノアミンオキシダーゼA遺伝子の欠落を引き起こす。

この遺伝子は、反社会的行動や犯罪率の高さと関連していたことをあきらかにした。

遺伝学者のマリオ・フラガらによると、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児を対象にした研究で、生活習慣や環境が遺伝子の発現に影響を与えることを示した。

関連した研究によると、孤独が健康に中程度の悪影響をもたらす遺伝子の発現を起こす要因であることがわかった。

IQの遺伝率を決定するうえで、環境が重要な役割をもっていることがわかったという。

このように遺伝子と環境との相互作用がもたらす影響があるみたいだが、完全にはわかっていないという。

だが、遺伝子がすべてを決めるというわけではなく、子供が育つ環境、とくに家庭に注目する必要があるという。

ネグレクトでここまで脳が小さくなる

幼い頃に親密なふれあい体験が欠落すると、脳の発達に悪影響を及ぼすことは、発達心理学の分野からも神経学的にも裏付けられている。

ルーマニアの幼児に関する邪悪な研究が意図せずにおこなわれてしまった。

ルーマニアの国営孤児院では、生まれたばかりの子供たちが生活環境の劣悪な孤児院に収容されていた。

そこでは、社会的や知的といった刺激が最低限しか与えられずに子供たちは育つことになった。

その結果、認知機能の発達が遅れ、社会的行動に深刻な障害が生じ、ストレスに対する異常な過敏性が見られた。

この状況は、幼少期にネグレクトに遭った子供たちと合致していて、認知や情動、健康に長期的な問題を抱えることが多いという。

1つの要因として、幼少期の親密なふれあいが脳の機能をつかさどる重要な部分の発達に関係し、親密なふれあいが欠落すると、脳の発達に異常が生じる。

ジェームズ・J・ヘックマン (2015). 幼児教育の経済学 東洋経済新報社 pp. 26 より作成

ネグレクトを受けて育った3歳児と普通の3歳児の脳を比べた画像のイメージがこちら

極度のネグレクトを受けて育った子供の脳は、脳のサイズが小さく、脳室が肥大し、大脳皮質の組織が委縮していることがわかった。

つまり、幼少期の環境は重要なものである。

幼少期の環境

この環境を社会科学者が測るのに使用してきたのが「両親がそろっていることと世帯所得」であるが、これは大雑把な目安にしかならないという。

両親がそろっていても、父親に反社会的な傾向があったり、夫婦の関係が破綻していたりすれば、父親の存在はマイナス要因になる。

世帯所得が関係しているのは、経済的に豊かになれば、親の子育てが改善し、子供に手をかける時間が増える。

つまり、両親がそろっていることも世帯所得も、子供を育てる環境につながっているので、幼少期の環境、要するに親の行動や反応を改善すれば、子供に重要な能力が改善されることを示している。

逆に言うと、両親がそろっていても世帯所得が高くても、家庭環境が悪ければ、子供に悪影響を与える可能性が高いと言える。

まとめ

  • 子供の能力は「生まれ」か「育ち」ではなく、それぞれの相互作用によって、子供の能力に影響している部分がある。
  • 子供が育つ環境、とくに家庭に注目する必要がある。
  • 環境が与える影響は、脳の発達にも影響する。
  • 環境を改善すれば、子供に重要な能力を改善することが可能。

参考文献

ジェームズ・J・ヘックマン (2015) 『幼児教育の経済学』東洋経済新報社

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