学校や社会の中で過ごすということは、何らかの集団に属するということであるが、この集団の一員であるという認識、帰属意識は良くも悪くも結果に大きな影響を与える。
スタンフォード大学の心理学者クロード・スティール氏の実験で「ステレオタイプの脅威」というものがある。
これは、知的や身体的な能力をテストする前に、帰属する集団に関係する事柄(ステレオタイプ)をほのめかすと、テスト結果に大きな影響を与えるという効果です。
例えば「白人は運動能力が低い」「黒人は知的でない」といったステレオタイプをほのめかすと、悪い結果になるという。
記憶力のテストをやる前に、年齢とともに記憶力は低下すると書かれた記事を読ませると、テストに出た単語を覚えていたのは「44%」、記事を読まなかったグループは「57%」の単語を覚えていた。
性別や国民性などによっても影響の仕方は変わるが、「ステレオタイプの脅威」という効果は確かにある。
だが、最近の研究で当時の実験を再現してみると「ステレオタイプの脅威」という効果を再現できなかったという事実も一部あります。
この事実を踏まえたうえで読んでほしい。
ステレオタイプの脅威をなくすには
ステレオタイプの脅威をなくす、あるいは少なくするには「ステレオタイプの脅威」について学ぶことが最も効果的な方法だと言われています。
つまり「知能は様々な影響を受けやすい」と知ることで効果がなくなる、減少することがわかっている。
心理学でも○○効果のことを知っているだけで、その効果の影響を受けにくくなるということがあるので、その原理と同じような作用だと思う。
このことを学んだ生徒たちは、自信や成績が上がりやすいという。
詳しく知りたい場合は、クロード・スティール著「ステレオタイプの科学」を読んでみて下さい。
2つのマインドセットとステレオタイプの脅威
スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエック氏は「心のありよう」で生徒たちの成績が伸びるのか予測できるという。
心のありよう、つまり、考え方の癖・マインドセットを2つのタイプに分けた。
1つ目は「硬直マインドセット」、2つ目は「しなやかマインドセット」の2種類があります。
硬直マインドセットの特徴
これらがよく当てはまる人は「硬直マインドセット」になります。
不安になりがちで頭の中に苦手・できないことがいつもあり、挑戦することを避ける傾向があります。
しなやかマインドセットの特徴
これらがよく当てはまる人は「しなやかマインドセット」になります。
しなやかマインドセットの特徴は、自分が成長することが重要だと考えます。
しなやかマインドセットの方が成績が伸びる
キャロル・ドゥエックによると、自分の能力は伸ばすことが出来ると信じている生徒の方が、成績が伸びるという。
そしてマインドセットも「しなやかマインドセット」に変えることが出来るという。
さらに「しなやかマインドセット」を持つことは、ステレオタイプの脅威にも効果があることがわかった。
ジョシュア・アロンソンの研究によると、1年のあいだ、低所得層の7年生(中学1年生)に大学生の助言者を一人つけ、定期的にメールで連絡を取り合ってもらう実験をした。
メールの内容に「しなやかマインドセット」をつくるための内容「知能は訓練によって伸ばすことのできる能力である」などの助言を受け取るグループと
「薬物は成績にも悪影響を及ぼす」などの助言を受け取るグループに分けた。
その後、学力テストで比較すると「しなやかマインドセットをつくるための助言」を受けた生徒の方がはるかに良い成績を出した。
とくに、アメリカの女子生徒には「女性は数学に弱い」というステレオタイプが存在するというが、しなやかマインドセットの助言を受けた女子生徒は、数学の平均点が男子と同じになった。
アンチ・ドラッグの助言を受けていた女子生徒の数学の平均点は74点、男子生徒は82点
しなやかマインドセットの助言を受けた女子生徒の平均点は84点で、男子との差がなくなった。
まとめ
以上を踏まえると
- ステレオタイプの脅威について知ることは有効
- しなやかマインドセットに変えることは可能である
- しなやかマインドセットを持つことは成績も伸びやすい
- 能力は改善できる・変化することができると信じることで「ステレオタイプの脅威」を無効化できる
ステレオタイプの脅威については、まだまだ議論する余地があるように思えるが、とりあえず上記のことが学べたので良かったと思う。
子どもに「どんな脅威があるのか、どんなバイアスがあるのか」教えてあげたいと思います。
「参考文献」
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