反証とは、ある理論が間違っていることを証明するプロセスのことを言う。
その逆の確証は、ある理論が正しいことを証明するプロセスのこと
人はもともと「反証」よりも「確証」を好む傾向があり、自分の考えが「間違っている証拠」を探すよりも、自分の考えが「正しいという証拠」を探す傾向がある。
これを「確証バイアス」という。
チェスの世界では、どうやらこの「確証バイアス」を払いのけ、自分の戦略を「反証」できる人こそ上達するみたいです。
チェスの上達を調べた科学者たち
チェスの名人には、目隠しをして複数の相手と対戦するという並外れた能力の持ち主がいる。
フランスの心理学者アルフレッド・ビネは、目隠ししてチェスができる名人には直観像記憶(フォトグラフィック・メモリ)の能力があるのではないかと仮説を立てた。
だが調べてみると、見えないチェスのプレイを映像化して記憶していたのではなく、彼らはパターンやベクトル、雰囲気というもので覚えていたことが判明した。
ここでいう雰囲気とは「感情、イメージ、動き、情念、変化し続ける風景などによって沸き立つ空気感」というものらしい。
たしかに、何かのプロの人が説明するときにうまく言葉にできない、感覚で覚えているみたいな話を聞くことがありますが、それが雰囲気で覚えていたってことなのかな。
次にオランダの心理学者アドリアン・デ・グロートが、チェスのプロは素早い計算でたくさんの手の数を考えついているから強いのだと信じられていたのだが、これを覆した。
チェスの強さを表すレーティング2500の選手と2000の選手たちを集め両者の違いを調べる。
すると両者とも考え出す手の数に差がなかった。
プロの選手が勝つのは単純に正しい手を考えているからだったのだが、直感でどの手を考えるべきなのか判断できるらしい。
つまり、プロ選手とそうでない選手の違いは「反証」にある。
反証の能力が低い人は「確証バイアス」に陥りやすいため「自分のこの手は正しいんだ」ということに時間をかけてしまうが、プロの選手は相手の1手で状況が変わったことを直感的に察知して次の手を考える。
チェスでは次の1手が致命的になる競技なので、この切り替えの早さが重要なポイントなのだろう。
これはチェスに限らず、変化の激しい時代に生きている私たちにも重要な要素だと言える。
確証バイアスを調べる実験
イギリスの心理学者ピーター・キャスカート・ウェイソンは、人は反証よりも確証を好む傾向があることを証明するため、面白い実験をおこなった。
被験者に3つの数字を見せて、これには法則があり見破ってほしいと伝える。
答えを出す前に、自分の予想を3つの数字にして法則に当てはまっているのか確認することができる。
「2-4-6」この数字の法則は?
多くの被験者が思い付くのは「2ずつ増加する数字」か「増えていく偶数」と予測する。
なので、この法則を確認する数字は「8-10-12」と質問者に聞くと「法則に当てはまります」と言われ、嬉しくもあり自信を持つ。
被験者はもう一度この法則を確認するために「20-22-24」と提示すると「これも法則に当てはまります」と言われる。
これで確信を持った被験者は答えを出す「この法則は、2ずつ増加する数字です。」
この答えは間違えだった。
正解は「増える数字」という法則で「1-2-3」でも当てはまっていた。
この実験のポイントは、自分の仮説で「間違っている数字」を提示して確認するしかない。
つまり、反証することができた人はこの問題の落とし穴に気付くが、反証できなかった人は問題の落とし穴に気付くことが出来ない。
これが「確証バイアスの罠」ということらしいが、僕は引っ掛かりそうやわ。
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