子育てにおいて3歳というのは重要なキーワード
成功に影響する脳の発達は、人生の最初の3年間、つまり3歳までに起こるとハッキリわかっているそうだ。
この3歳までというのは、様々な能力の支えとなる脳の神経系の基盤を形成している段階であるためである。
この神経系の基盤と関わる能力は「読み書き計算や比較、推測を扱う知的能力、生きていくための心の習慣や力、ものの見方」などが関係している。
そのため、3歳までに環境から受けた影響は、この神経系の基盤形成に良くも悪くも影響を与えてしまう。
その影響は増幅されていくので、子育てにおいて3歳というキーワードは非常に重要なものとなる。
子供の脳の成長に重要な「環境」とは
環境というと物理的なものをイメージするかもしれないが、子供に重要な環境とは「親や子供と関わる人の行動や態度」のことをここではいう。
子供に良い環境とは、親たち家族が子供に適切に反応すること、とくに子供がストレスを感じているときにどう対応するかが重要。
この親の反応によって子供たちは学び、脳内では感情や認識、言葉、記憶を制御する領域同士の結合を強固なものにする。
研究によると、子供が動揺しているとき、親が厳しい反応をすると、子供は強い感情をうまく処理することや効果的に対応することができなくなっていくという。
逆に、子供が落ち着きを取り戻すのを手伝える親は、子供がストレスに対処する能力にプラスの影響を与えるという。
子供に影響を与える親の反応は、子供に直接向けるものだけではなく、親同士の反応や態度からも影響を受ける。
オレゴンの研究によると、口論するだけの夫婦げんかでも乳幼児の発達に影響を与えるという。
生後6か月から12か月の乳児を対象に、眠っているときにfMRIを装着し脳波を測定した。
その乳児に、怒ったしゃべり声の録音を聴かせると、口論することがない家庭の子供の脳波は、比較的穏やかだったのに対し、口論する頻度が多い家庭の子供の脳波は、感情、ストレス反応、自制に関わる脳の部位に反応を示すことがわかった。
つまり、環境が不安定な状況、ネグレクトや虐待、トラウマになるような逆境などがあると、ストレス反応システムが不安定なものとなり、常に何が起こってもいいように警戒している状態となる。
こういったことから子供と関わる人の行動や態度が、子供の発達に影響することがわかっているが、それがどういったことに繋がるというのか?次で説明する。
子供の最初の発達は「非認知能力」の支えとなる
脳の前頭前皮質には、実行機能と呼ばれる特定の機能があり、やり抜く力やレジリエンスといった非認知能力の支えになるという。
実行機能は、混乱や予測が難しい状況や情報に対処する能力などがあり、成果の予測や行動に基づく期待、社会的にやってはいけないような衝動を抑制する能力などと関係している。
1848年アメリカの鉄道関係の仕事をしていたフィニアス・ゲージは、事故により片側、もしくは両側の前頭葉を損傷する大きな事故に見舞われてしまった。
奇跡的に生還し、記憶や言語、運動能力は正常だったのだが、ゲージの人格が怒りっぽく、短気で気分屋な性格になり、友人からも「もはやゲージではない」と言われるほど激しく変わってしまったという。
その他にも前頭前皮質を損傷してしまった患者の研究によると、患者は社会的に適切な行動を言語化することができるのに、実際に行動する際には、その行動が長期的に不利になると分かっていながら目先の満足感を得る行動を取ってしまうという。
つまり、前頭前皮質は実行機能や個性と言われるものと深いかかわりがあり、その実行機能という土台があることで、長期的な利益のためにやり抜く力やレジリエンスといった非認知能力を育てる支えとなっている。
そしてこのような能力は、子供が学校生活を送るうえで非常に役立ち、慣れない状況や困難な状況を乗り越えるのに求められる能力でもある。
前頭前皮質が重要な部位だとわかったが、ここの発達を妨げてしまうのが「ストレス」である。
脳の中でもストレスの影響を最も強く受けてしまう部分が前頭前皮質であるので、子育ての中でストレスや環境から大人たちがどう対処するのかが重要なポイントとなってくる。
そういった意味で最初の3年間は赤ちゃんにとって重要なものだが、もちろんそれ以降も子供の発達には重要なものであるのに変わりはなく、いつでも脳には可塑性というものがあり、常に変化することができ成長することができることも忘れてはいけない。
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