日本の企業の多くが「アメとムチ」を使いながら、労働者を動かしていますが、この「アメとムチ」では仕事のやる気が出ないどころか生産性も下がることが多くの実験から証明されています。
このことが分かっていても企業の制度・働き方は簡単に変えることができなく、コロナでリモートワークに切り替わるだけでも不具合や戸惑う人がいるように、もっと大きなことを変えようとすると企業にも労働者にも障害・負担が大きくかかってしまうのです。
このような社会で働く私たちは、なぜ仕事になるとやる気が出なくなってしまうのか?実験の内容と結果から紹介していきます。
お金に注目すると仕事のやる気が出なくなる
仕事をしたらお金という報酬をもらうのが当たり前だが、お金に注目し過ぎるとやる気が出なくなってしまうという実験結果が出ています。
給料をもらえばやる気が出ますが、それは短期的にしか効果がなく、お金にやる気を求めると今の給料では満足することが出来なくなり、昇給しないとやる気が出なくなってしまうのです。しかも昇給しても一時的にしかやる気が上がりません。
なぜ仕事になるとやる気が出なくなってしまうのか、面白い実験内容とその結果から紹介していきます。
ウィスコンシン大学ハリー・F・ハーロウ教授による実験
心理学の教授であるハリー・F・ハーロウ氏が1949年に行ったサルを用いた学習に関する実験で、想定外の結果から第三の動機づけを発見します。
実験内容は、問題解決能力を研究する目的で3つの仕掛けが付いた装置を作り、仕掛けを解くのに3つの手順を踏まないと解けない仕掛けになっており、サルがどう反応するのか観察しました。
開始そうそうにサルたちは、誰かに教えられたわけでもなく熱心に、しかも楽しそうに装置を解除するようになりました。
ここで想定外な結果になり、サルたちは装置の解除を楽しそうに何度も挑戦するようになり、しかも解除したからといってエサがもらえるわけでも、褒められるわけでもなく生理的動因でも報酬や罰などの外的要因を与えられるわけでもないのに、サルたちは何に動機づけられているのか説明できませんでした。
ハーロウ氏はサルたちが動機づけられた理由を仕掛けを解く満足感と楽しむことの喜び自体が動機づけになると、新たに第三の動機づけ「内発的動機づけ」と仮説を立てました。
この内発的動機づけは、エサなどのご褒美を与える外発的動機づけより弱いと考え、エサを与えればもっと仕掛けを解くはずだと実験を行いました。
結果は、間違いを犯すことが多くなり、仕掛けを解く成功率がかなり下がるという結果になってしまったのです。
この実験結果からハーロウ氏が人間の動機づけについてもっと理解する必要があると訴えかけますが、この訴えはむなしくも通りませんでした。
その後、カーネギーメロン大学のエドワード・デシによる人間への実験で、自分から進んで課題へ取り組む時間を計測したところ、お金をもらえるグループは熱心に課題に取り組んだが、翌日の実験で「今日は報酬なしです」と告げられると課題へ取り組む時間が大幅に減少し、お金がもらえることを知る前よりもさらに減少していたそうです。
何も報酬を与えられないグループは、自ら課題へ取り組む時間が伸びていったそうです。
お金が絡んだ面白い実験
人間の脳は合理的ではないと、お金を使った実験が面白かったので紹介します。
Aさんに1000円お金を渡し、Bさんと分けるように伝えられる。
Bさんに渡す金額は、Aさんが自由に決めることができる、Bさんが金額を受け入れたら二人ともお金がもらえ、Bさんが金額を拒否したら二人とも1円も貰えないルールで行われる。
Aさんの金額が400円であなたに600円渡すと言われたら、断る人はいないですよね。500円づつでも断る理由がないですが、Aさんが800円あなたに200円渡すと言われたら、あなたは承諾しますか?
この実験では、自分がもらえるお金が200円以下になると多くの人が受け取らない選択をすることが分かりました。
こんな条件がフェアではないと感じたり、自分の取り分が少ないことで相手への怒りを感じ思い知らせたいという感情が勝ってしまうのです。
合理的に考えれば、何円であっても貰えるならその金額で受け取った方が得なのに、人間の脳は感情によって簡単に動かされてしまうという結果になりました。
仕事でも給料が平等ではないと感じてしまったり、仕事内容が給料と見合ってないと感じたりすると、途端にやる気は出なくなってしまうのではないでしょうか。
仕事になるとやる気が消え去る実験
自由に遊びでしていたことが仕事になるとやる気がなくなってしまうという実験結果があります。
実験内容は、園児たちの中で楽しそうに絵を描いて過ごしている子を見つけ、3つのグループに分けて報酬を与えた場合どのような影響が出るか調べる実験である。
Aグループには、絵を描けば豪華な賞状が貰えると伝えました。
Bグループには、賞状が貰えることを教えず、絵を描き終わると賞状をあげました。
Cグループには、賞状のことも知らされず、絵を描いても何も貰えないグループ。
実験結果は、B・Cグループは実験前と同じくらい熱心に絵を描いていたのに対して、Aグループは実験前よりも絵を描く時間が大幅に減少しただけでなく、絵に対する興味も失ってしまったのです。
つまり、子どもたちの遊びが仕事に変わってしまうと内発的動機づけに影響を及ぼすと分かり、大人を対象にした実験でも「これをしたらこれをあげる」と約束したグループだけがやる気・モチベーションを失っていく結果になりました。
多額のお金をあげれば成績が良くなるのか?
仕事になるとやる気がなくなる実験がありましたが、生活水準以上の多額なお金を報酬にして実験を行えば、バリバリ仕事をこなし能力や成績が上がるはずだと思われていました。
皆さんの中にも、あと5万でいいから給料が上がってくれれば、何でもこなしてやるのに…など思ったことはないですか?
この実験結果を見ればウソだーって思うはずです。僕もウソだーって思いました。
実験内容:87人を対象に運動神経・創造性・集中力・記憶力などを必要とする何種類かのゲームをしてもらう。それぞれのゲームで特定の成績を達成したら、お金を報酬として与えられ、ゲームに必要な能力・成績はお金の金額によってどう影響するのか調べる研究になります。
Aグループは、目標成績を達成した場合、一日分の賃金に相当する金額が貰える。
Bグループは、目標成績を達成した場合、2週間分の賃金に相当する金額が貰える。
Cグループは、目標成績を達成した場合、5ヶ月分の賃金に相当する金額が貰える。
実験結果はどうだったのかというと、この中で一番成績が良かったグループは、CではなくAグループだった!
Bグループの成績はAグループよりも悪く、Cグループの成績はBグループよりも悪い成績結果となったのです。
5ヶ月分もの金額が貰えるCグループは、ほとんどのゲームにおいて成績が最下位という驚く結果になりました。
お金という外発的動機づけは、必ずしも良い結果になるわけでもなく、かえって悪影響を及ぼすということが実験から分かりました。
内発的動機づけに目をやりやる気を取り戻す
仕事のやる気を取り戻すには、自分の中からやる気が出てくる内発的動機づけに注目する、もしくは目的にすると良さそうです。
職場の人間関係やストレスが原因でやる気が出ない人は、そこが原因かもしれませんが、そうでない場合は外発的動機づけによって、やる気を出そうとしているのかもしれません。
こちらの記事に内発的動機づけによってやる気を出す方法を紹介しているので、一度読んでみてください。
コロンビア大学の研究により、人それぞれにやる気のタイプがあることが分かりました。自分のやる気タイプを知る方法は、こちらの記事からどうぞ!
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